相撲協会の公益認定を取り消すためにはどうすればいいか?

相撲協会の公益認定を取り消すためにはどうすればいいか?

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仕事がら公益法人関係のニースはよくチェックしていますが、ネットでは相撲協会について批判が多いですね。

「公益認定を取り消せ!」みたいな意見が目立ちます。

世間でそのような声がある一方で、所管である内閣府公益認定等委員会が相撲協会に対して具体的な指導等を行ったという報道はないようです。

公益財団法人として、たいへん大きな税制上のメリットを受けながら、問題が絶えず起きている相撲協会。世間の風当たりは強いが、公益認定を今後取り消される可能性はないのか。
内閣府の公益認定等委員会事務局の担当者は、「あくまで認定法の基準に該当するかどうかで判断している」と話す。

出典:「公益認定取り消せ」問題噴出の日本相撲協会、収入100億円超で法人税等わずか15万円

この記事を読むと、国民の感情論は別として、法律上の問題が認められないため内閣府が動いていないような印象を受けますね。

確かに、感情的に「あんな団体許せない!公益認定を取り消せ!」と憤っても、公益法人認定法上の根拠がなければ認定を取り消すことはできません。

しかし、相撲協会について公益法人認定法上の問題が全く無いかのといえば、そうではないはずです。

相撲協会について、公益法人認定法上の問題点を端的に指摘した衆議院での質問があります。

出典:公益財団法人日本相撲協会への政府の評価に関する質問主意書

日本相撲協会の提出した本法施行規則第二十八条第一項第二号に掲げる書類では、法人の目的として、「太古より五穀豊穣を祈り執り行われた神事(祭事)を起源とし、我が国固有の国技である相撲道の伝統と秩序を維持し継承発展させるために、本場所及び巡業の開催、これを担う人材の育成、相撲道の指導・普及、相撲記録の保存及び活用、国際親善を行うと共に、これらに必要な施設を維持、管理運営し、もって相撲文化の振興と国民の心身の向上に寄与する」と明示されているが、現時点でもこの目的に基づいた運営がなされていると考えるのか。特に、今次の暴力事件に関して、「これを担う人材の育成、相撲道の指導」という観点からは、目的を逸脱しているのではないか。

相撲道の指導・普及が国民の心身向上に寄与するのか?

相撲協会の事業目的を簡単に言えば、相撲を通じて、「国民の心身の向上に寄与する」ことです。

これは相撲だけの話ではなく、スポーツ系団体の事業目的というのは、どの団体も基本的には同じです。

当該スポーツ・競技を通じて、国民の心身の向上に寄与するということが目的になっているはずです。

その点、相撲における横綱という存在は、相撲道を極めた人物と評価できる存在です。

つまり、横綱は、相撲協会による公益目的事業の成果そのもの、公益的効果の象徴的存在のはずです。

いわば、相撲道の頂点に到達したことで、心身が最高に向上した国民の一人であるはずです。

ところが、その横綱でさえ、低レベルな暴力的不祥事を起こすありさまです。

未熟な下っ端の人間が不祥事を起こしたのとはわけが違います。

相撲におけるトップアスリートである横綱の暴力行為です。

相撲において最高の地位にある横綱でさえこのありさまでは、そもそも、相撲道を指導・普及したところで、「国民の心身向上に寄与する」という社会的実態が存在しないのではないか。

このような根本な疑念が生じるわけです。

公益目的事業としての合目的性が重要な問題

公益認定申請を行って認定が認められなかった団体の答申書(不認定事例)を読むと、内閣府公益認定等委員会がどのような考え方で公益法人の認定を行っているのかが分かります。

相撲協会とは全く関係無い団体ですが、参考までに公益法人informationで公表されている不認定の答申書を見てみましょう。

公益法人としての認定を受けるために必要な考え方を、一般の市民が理解する上で参考になります。

公益目的事業該当性については、「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)」(平成20年4月(平成25年1月改訂)内閣府公益認定等委員会)において、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」という事実があるかどうかを認定するに当たっての留意点として「公益目的事業のチェックポイント」を掲げ、「公益目的事業か否かについては本チェックポイントに沿っているかを勘案して判断することとなる」とされている。
そして、「公益目的事業のチェックポイント」においては、事業区分ごとに留意すべき視点を掲げつつ、これらは、①事業目的(不特定多数でない者の利益の増進への寄与を主たる目的に掲げていないかを確認する趣旨)と、②事業の合目的性(事業の内容や手段が事業目的を実現するのに適切なものになっているかを確認する趣旨)の観点に集約されるものであることが明らかにされている。

と答申書では述べられています。

公益認定申請の実務に携わっている者にはおなじみの決まり文句です。

結論としては

申請法人が掲げる目的を達成するための合理的な手段と言えるのかについては、上記の理由により、なお疑義があると言わざるを得ず、…(中略)…不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものであると認めることはできない。

このように内閣府は申請法人に対して公益性を認めずに不認定としています。

公益法人の認定において、事業の合目的性が重要であることがわかります。

これまで内閣府が公表している不認定事例のロジックを踏襲すれば、相撲協会の事業が「国民の心身向上に寄与する」という目的を達成する合理的な手段と言えるかどうか、疑義がある。

不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものであると認めることはできない。

そのように事実認定することも十分可能だと個人的には思います。

少なくても、内閣府がこれまでに公表している不認定事例のロジックを相撲協会に当てはめると、相撲協会を公益法人として認定することは難しいはずです。

相撲協会の不適切な状況が公益認定申請の時点から存在したとすれば、そもそも相撲協会に公益法人の認定を与えたこと自体が最初から誤りであったともいえます。

ある種のスポーツ・競技団体のトップアスリートが暴力行為を起こすような現実を目の前にして、当該競技を指導・普及することが、「国民の心身の向上に寄与する」と主張したとしても、説得力が無さすぎるのではないでしょうか。

仮に、トップアスリートが傷害事件を起こしたスポーツ団体から公益認定申請を相談された場合、私なら「公益目的を達成する手段としての合目的性が疑わしいですね。技術的能力も担保されているか疑わしいです。公益認定は難しいですね。」と答えます。

内閣府公益認定等委員会が相撲協会を野放しにしている現状は、これまでの不認定事例で公表している考え方と整合性が取れないと個人的には考えています。

このまま相撲協会を放置しておけば、公益法人制度に対する国民の信頼を損なうことになりかねませんし、まじめに公益法人として運営している他の多くの公益法人に対しても示しがつきません。

内閣府は相撲協会に勧告を行うべき

横綱が暴力行為を行うような状況は、公益法人の在り方としては極めて異常です。

認定法5条の基準に適合しなくなったと疑うに足りる相当な理由があると考えられます。

公益法人の認定をいきなり取り消すことは制度上難しいので、まずは相撲協会に対して報告徴収を行って、認定法28条による勧告を行うべきでしょう。

参考:公益法人認定法・抜粋

(勧告、命令等)
第二十八条 行政庁は、公益法人について、次条第二項各号のいずれかに該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合には、当該公益法人に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。
2 行政庁は、前項の勧告をしたときは、内閣府令で定めるところにより、その勧告の内容を公表しなければならない。
3 行政庁は、第一項の勧告を受けた公益法人が、正当な理由がなく、その勧告に係る措置をとらなかったときは、当該公益法人に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
4 行政庁は、前項の規定による命令をしたときは、内閣府令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
5 行政庁は、第一項の勧告及び第三項の規定による命令をしようとするときは、次の各号に掲げる事由の区分に応じ、当該事由の有無について、当該各号に定める者の意見を聴くことができる。
一 第五条第一号、第二号若しくは第五号、第六条第三号若しくは第四号又は次条第二項第三号に規定する事由(事業を行うに当たり法令上許認可等行政機関の許認可等を必要とする場合に限る。) 許認可等行政機関
二 第六条第一号ニ又は第六号に規定する事由 警察庁長官等
三 第六条第五号に規定する事由 国税庁長官等
(公益認定の取消し)
第二十九条 行政庁は、公益法人が次のいずれかに該当するときは、その公益認定を取り消さなければならない。
一 第六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至ったとき。
二 偽りその他不正の手段により公益認定、第十一条第一項の変更の認定又は第二十五条第一項の認可を受けたとき。
三 正当な理由がなく、前条第三項の規定による命令に従わないとき。
四 公益法人から公益認定の取消しの申請があったとき。
2 行政庁は、公益法人が次のいずれかに該当するときは、その公益認定を取り消すことができる。
一 第五条各号に掲げる基準のいずれかに適合しなくなったとき。
二 前節の規定を遵守していないとき。
三 前二号のほか、法令又は法令に基づく行政機関の処分に違反したとき。
3 前条第五項の規定は、前二項の規定による公益認定の取消しをしようとする場合について準用する。
4 行政庁は、第一項又は第二項の規定により公益認定を取り消したときは、内閣府令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
5 第一項又は第二項の規定による公益認定の取消しの処分を受けた公益法人は、その名称中の公益社団法人又は公益財団法人という文字をそれぞれ一般社団法人又は一般財団法人と変更する定款の変更をしたものとみなす。
6 行政庁は、第一項又は第二項の規定による公益認定の取消しをしたときは、遅滞なく、当該公益法人の主たる事務所及び従たる事務所の所在地を管轄する登記所に当該公益法人の名称の変更の登記を嘱託しなければならない。
7 前項の規定による名称の変更の登記の嘱託書には、当該登記の原因となる事由に係る処分を行ったことを証する書面を添付しなければならない。

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